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阪神では入団1年目から奪三振王となり、若くしてエースに君臨。
広島、日本ハム時代はリリーフで活躍して両チームの優勝に貢献し、「優勝請負人」とまで言われた江夏さん。
昭和46年のオールスターゲームで奇跡の9者連続三振を奪った試合は、今も多くのプロ野球ファンの間で語りぐさとなっている。
18年の現役生活中で16回オールスターゲームに出場した江夏さんに、連続三振を奪った試合のことを中心に、オールスターゲームの思い出を語っていただいた。
◆デザイン:ビーフェイス ◆写真:K-KUMP ◆文:岸並 徹

何だか、聞いてるコッチが緊張しちゃいますが…(苦笑)。
江夏 氏)先頭打者から8人連続で三振を取って、とうとう9人目。その最後のバッターがキャッチャーの後方にファールを打ったんで、咄嗟にキャッチャーの(同僚の)田淵に「追うな!!」って叫んだんだよ。よくマスコミには「江夏が捕るなと言った」と書かれることがあるけど、実際は「どうせスタンドに入るんだから、早く座ってくれ」という意味で叫んだんだよ。
それは江夏さんのイメージに関わる問題ですよね(笑)。
江夏 氏)というのも、キャッチャーが捕りに走ると時間が取られて、こっちの集中力が途切れるから。待たされなければ三振を取る自信があったから、早く投げたくて仕方なかった。
そしていよいよ、最後のボールですね。
江夏 氏)そう。最後の球がキャッチャーミットに収まった瞬間、それまでの静けさがウソのように、もの凄い歓声が上がってさ。ただ、意外とあっけないなという感じだったね。「なーんだ、こんなモンか」と(笑)。自分でもホっとしたのは確かだけど。
そりゃーセ・リーグの選手達も大騒ぎですか?
江夏 氏)それがさ、最後の三振を取ったボールを田淵がてっきりボクに渡してくれるもんだと思っていたら、彼はいつものようにマウンドの方へポーンって投げちゃうんだよ。
(一同・大爆笑!!)
江夏 氏)それを自分で取りに行くのもカッコ悪いと思ってそのままベンチに戻ったら、何と王さんが拾ってボクに届けてくれたんだよ。あの時からかな、ボクが真剣に王貞治のファンになったのは。「それに比べてオマエは冷たい男だなー」と、田淵には後々何回も文句を言ったけどね(笑)。

やはり、江夏さんにとって、この快挙は何度も出場したオールスターゲームの中でも、最高の思い出なんですね。
江夏 氏)毎年オールスターの季節になるたびに、いろいろな人に話題にしてもらえるのは、この年齢になると、とてもありがたいと感じるね。思い出は押し売りできないもので、自分にとって印象的なことでも他人にもそう思ってもらえるとは限らない。それを一般の方にも「あれは凄かった」と言ってもらえるのは、選手にとって最高に嬉しいことだよね。
調べてみて分かったんですが、江夏さんってあの前の年も8つ三振を奪ってらっしゃるんですよね!?
江夏 氏)そうだったかな。ま、言い換えれば、あの9連続奪三振っていうのはボクの個人的な記録であって、あの試合にはもっともっといろんな記録が重なってるんだよ。知ってる?
う〜ん…。
江夏 氏)あの試合はね、ボクの後に渡辺さん(巨人)から最後は小谷さん(大洋)まで5人の継投で繋いでノーヒットノーランを達成したゲームなんだよ。さらに5人合計で「一試合16奪三振」でしょ。これも未だに破られていないオールスターでの記録なんだ。
そうだったんですか!?
江夏 氏)ボクの9連続奪三振ばかりが表面に出るけど、それを中心にして5人で作った大記録がさらに2つもあるってこと。たまたまボクはその試合の先発だっただけ。未だに破られていないのは誇りに思っているけどね。
オールスター史上に残る試合です。
江夏 氏)投手から見ればね。バッターからしたら「コノヤロー!!」っていう試合だよ(笑)。

今でも「9者連続奪三振を狙います!!」って宣言するピッチャーがいらっしゃいます。
江夏 氏)記録なんてのは破られるためにあるもんだから。逆に、いつまでも古い記録が残ってるのも淋しいもんだけどね。
ただ、この記録に限ってはタイ記録が精一杯です(笑)。
江夏 氏)だから記録っちゅうのはワンちゃんの「868本塁打」、金田さんの「400勝」、福本の「1000盗塁」、張本さんの「3000本安打」、そして衣笠の「2215試合連続出場」。こういった積み重ねられた数字を本当の記録って言うんだよね。“瞬間的にできる記録”っていうのは8割が運だから、階段を一歩一歩上る素晴らしさと苦しさがある“通算の記録”っていうのはやっぱり偉大だなーって思うよ。

今年もオールスターゲームが近づいてきましたが、注目している選手は?
江夏 氏)やっぱりマーちゃん(田中選手/楽天イーグルス)!! 今年のキャンプで会って話をしてみたんだよ。「オマエ、どこ出身じゃ?」って聞いたら「伊丹市です」って。ボクが隣の尼崎市で育ったもんだから「何や、隣町かい」って言ったら、ニコーって笑顔になったんだよね(笑)。
セ・リーグでは?
江夏 氏)どうしても阪神OBとしては金本。彼ももう、あと何回出られるかという年齢になったけど、今の強い阪神の基盤を作ったのは彼だし、いい思い出を作って欲しいね。。
ファンにはオールスターゲームのどんなトコを見て欲しいですか?
江夏 氏)ファンは、自由に好きな見方をしてくれればいいですよ。セ・リーグのファンは、交流戦のお陰でパ・リーグの野球に目覚めたと思うけど、一昨年はロッテ、昨年は日本ハムが日本一になったことからも分かるように、昔はダークホースと言われていたチームが今は強くなっている。そういうチームの選手にもドンドン注目してほしいね。
最後に、オールスターゲームに出場する選手にメッセージをお願いします!!
江夏 氏)お祭りではあるけれど、せっかくオールスターに選ばれたからには「賞の1つでも持って帰るぞ!!」という気持ちでプレー欲しいね。ベンチにいる時はリラックスしていても、ボールに相対する時は精一杯やって、多くのファンの前で自分をアピールしてもらいたい。オールスターゲームの舞台は、それが遠慮なくできる場所なんだからさ。
江夏豊(えなつ・ゆたか)1948年(昭23)5月15日、奈良県生まれ。大阪学院高から66年ドラフト1位で阪神タイガースに入団。1年目に奪三振王。翌68年には最多勝を獲得し、さらに401奪三振で世界記録を樹立する。79年の日本シリーズでMVPを獲得。「江夏の21球」として話題となる。85年に米大リーグに挑戦するも、昇格を果たせず現役引退。通算206勝158敗193セーブ、防御率2.49。左投げ左打ち。
江夏豊氏はオールスターに16回出場。通算26試合に登板し、5勝3敗6セーブ、防御率2.20の成績を残す。70、71、80年とMVPを3回獲得している。71年の第1戦では、オールスター史上初の9者連続奪三振という歴史的な大記録を達成。米大リーグでも、5連続奪三振が最高。さらにこの9連続を挟み、70年第2戦の5連続奪三振と71年第3戦の奪三振を合計した、15者連続奪三振というオールスター記録も樹立している。