

1937年(昭12)1月9日、岐阜県生まれ。岐阜高から55年に巨人入団。59年に正捕手となり、V9の中心選手として活躍。61年から8年連続でベストナイン。74年に現役引退。86年に西武監督を務め、9年間で8度のリーグ優勝、6度の日本一に輝く。01年から2年間横浜で監督。通算成績は打率2割3分6厘、81本塁打、582打点。右投げ左打ち。
森祇晶氏は選手、監督の両方でオールスター出場を果たしている。選手としては60年から11年連続出場し、36打数11安打で打率3割6厘をマーク。61年から68年までは8年連続ファン投票で選ばれた。西武監督時代には全パの監督として8回出場し通算10勝9敗1分け。監督としての出場回数は水原監督、川上監督の11回、鶴岡監督の9回に次いで多く、87年には全パを3連勝に導いている。森監督は公式戦が785勝583敗68分け、日本シリーズが29勝20敗1分けで、オールスターを含め監督としては3舞台すべて勝ち越している。


団塊世代にはV9時代を支えた名捕手として、
ボクのような30代には常勝・西武の指揮官として。
長きに渡って球界と、オールスターゲームに貢献されてきた森さん。
今は日本から離れハワイに在住されているものの、
日本球界のことは毎日欠かさずチェックされているとか。
そして、ハワイを「日本とアメリカの中間」と捉えられていて、
だからこそ、野球というものを違ったカタチで見ることができるという…。
そんな森さんに、「オールスターゲームとは何か?」を教えていただくことにした。
— 森さんはプレーヤーとして11回もオールスターに出場されていますが、初めて出られた時のことは覚えていらっしゃいますか?
森氏:当時は上下関係がもの凄く強い時代だったからさ、ベンチの端っこで小さくなっていたのを覚えているよ。最初はやっぱり「自分はこんな所にいていいのかな?」っていう気後れみたいなのは確かにあったなぁ…。僕はキャッチャーだったから、ブルペンに行っちゃったりしてね。
— 例えば「この人に会って話をしてみたい!!」とかあったんですか?
森氏:うーん。そういう楽しみより、ジャイアンツっていうのは常にオールスターの後にある「日本シリーズ」を見据えていなければならなかったからね。だからオールスターでは試合をしながらパ・リーグのピッチャーやバッターを観察してたよ。当時はまだスコアラーってのもいなかったし、ビデオもない時代だったので、“来るべき日本シリーズのためのオールスター”って感じだったかな。まだペナントレースの半分の頃だけど、優勝するのはジャイアンツの宿命だったからね。それに、オールスターに出てくるような選手ってのは、日本シリーズで当たりそうな人ばかりだったからね。
— 同じリーグのピッチャーの球を受けるのも勉強になりましたか?
森氏:そうだね、だから“お祭り”って感じで楽しむ暇はなかったよ。僕はキャッチャーだったから、いつもジャイアンツが抑えられているピッチャーの球を実際に捕ってみて、いろんなコトを持ってかえるのは1つの仕事だったよね。
— 当時、苦戦されていたピッチャーを研究したりとか?
森氏:そりゃあ偉大な方々、「猛者」と呼ばれる連中ばっかりだったからねぇ(苦笑)。
— ちなみにバッターとして見るのと、実際にキャッチャーとして球を受けるのとでは、印象が全然違うコトもあるんですか?
森氏:確かにあったよね。それまで対戦してきても、受けてみて初めて分かることはあったよ。オールスターに出て、セ・リーグの並み居るエース級のピッチャー達の球を受けるっていうのは、自分が上手くなるための勉強だった。
— 何か、当時の面白いエピソードなんてあります?
森氏:まぁ〜言っちゃっていいのか分かんないけどさ、本当にオールスターに出てくるピッチャーってのはワガママというか…(笑)。だって、各チームのエースと呼ばれる人たちだらけだからさ。サイン通りに投げて来なかったりするのよ!!
— えぇー!? サインと違うボールを投げるんですか?
森氏:そうだよ、危なくてしょうがないよ。ストレートのサイン出してもカーブ投げてきたりさ。「投げる瞬間に気が変わったから」とか言われてさ。当時は冷や汗もんだったよ。あはははは!!
— そういえば、森さんは当然のことながら「監督」としてもオールスターゲームに出られていますけど、やっぱりオールスターの選手起用って難しいものなんですか?
森氏:そりゃあ、他チームから集まった選手ってのはムチャに使えないじゃない? お客さんの喜ぶような対決を見せてあげたいけど、後半戦のことを考えたら酷使することもできない…。そういう場面では気を使ったよね。
でもね、それよりも自分のチームのピッチャーが打たれた時なんかが一番気を揉んだよ。「ゲームを壊しちゃいけない」ってのは監督としての使命だからね。そういう意味ではペナントレースよりも「気疲れ」はあったよね(苦笑)。
— 確かに、自分が起用した他チームの選手にケガをされたらなんて考えたら怖いですよね?
森氏:いやいや、オールスターゲームってのは「いかに自分をアピールするか」っていう場だから、そこに選ばれるようなスターはケガを恐れるようなプレーじゃなく、自分が持っているモノを最大限に多くのファンの前で披露するのが使命だよね。そういう意味では、オールスターゲームというのは日本シリーズと同等のイベントなんだよ。だから、今も昔も、出場すれば絶対に自分の人生の中で確かなステータスになるような試合なんだ。
— そういえば、森さんはセ・リーグだった選手時代とは違い、監督としてはパ・リーグを率いていらっしゃったんですよね?
森氏:そうそう、セ・リーグの方がマスコミに取り上げられてた時代だったから、僕がオールスターに監督として出場した時はいつも「こういう時こそ自分をアピールしろ!!」なんてことを口酸っぱく選手達に言ってたよ(笑)。でもさ、選手達がセ・リーグはセ・リーグ、パ・リーグはパ・リーグと互いに対抗意識を燃やせば、自然といいゲームができていくと思うんだけどね。
— 今年のオールスターゲームに話を移しますが、注目の選手はいらっしゃいますか?
森氏:楽天の田中君や日ハムのダルビッシュ君は当然、選ばれるんだろ? そういった若いピッチャーの名前が出るあたりに、“フレッシュさ”が今年のガリバーオールスターゲームにおける1つのキーになってくると思うよ。彼らが自分たちの実力を惜しみなく出してくれれば、楽しいゲームになるだろうね。
— 「プロ野球のオールスターゲームって、こういうところを見ると面白いんだよ」というのはありますか?
森氏:それぞれのスター選手が持ってる特徴を、1つのゲームの中で堪能できるのがオールスターゲームだよね。だから奪三振やホームランだけじゃなくってさ。昔で言ったら「福本選手の盗塁」と「それをボクらキャッチャーがいかに刺すか!?」なんていう地味な対決も楽しかったよ(笑)。
— 最後に、オールスターゲームについて一言、よろしくお願いします!!
森氏:選手にはオールスターゲームを「お祭りだ」っていう意識だけでやってもらったらケガも多くなるから、とにかく真剣に、「オールスターに選ばれた」っていう誇りをもってプレーして欲しいもんだね。僕が心から望むことは、オールスターっていうのは球界を代表するスターの集団が最高のパフォーマンスをお客さんにお見せするゲーム。今も昔も、出場すれば自分の人生の中で大きなステータスになるような試合なんだから、どんな形であれ、選ばれた以上はケガを恐れずに精一杯いいプレーを見せて欲しいですね。